12月8日、中央大学総合政策学部において、学部公式イベントである「リサーチフェスタ2023」が開催された。
リサーチフェスタとは、総合政策学部の学生たちが日ごろの研究成果を披露しあう発表会のことである。教員や他のゼミ生、聴衆の学生などと発表を通じて交流し、自らの研究活動をより一層活性化させることを目的としているため、「知の祭典」とも称される。このように、総合政策学部を盛り上げているリサーチフェスタであるが、学生主体のイベントであるため、基本的な運営は実行委員会によって行われている。
2013年の初開催から今年で10周年を迎えるこのイベントは近年、新型コロナウイルスによりオンラインやハイブリッド形式での開催を余儀なくされていた。しかし、今年度は4年ぶりとなる完全対面形式での復活を遂げ、会場は賑わいを見せていた。対面形式ならではの緊張感に加え、発表者の真剣な表情、そして参加した学生たちが熱心に耳を傾けていた姿が印象的であった。
リサーチフェスタでは予選も行われ、そこで高い評価を得られたグループのみが本選へと進出できる仕組みとなっている。11月27日と28日の2日間にわたり開催された予選では、計21組の発表者たちがしのぎを削りあっていた。
12月8日に行われた本戦では、計6組のグループが出場した。各グループはそれぞれ15分間の発表と10分間の質疑応答を行い、審査得点が高い順に最優秀賞1チーム・優秀賞5チームを決定する。どのグループも明快かつ論理的なストーリーラインに沿った発表であり、前提知識のない我々も引き込まれ、15分があっという間に感じるほど興味深い発表であった。質疑応答の時間には、観覧者や教授からの鋭い指摘と質問が飛び交い、教室中は見ているこちらまでもが冷や汗をかくような緊張感に包まれた。発表の合間に行われたコーヒーブレイクでは、和やかな雰囲気の中、発表者同士や教授との間での交流を行う姿が見られた。
激戦に次ぐ激戦 「最優秀賞」に選ばれたのは…
最優秀賞に選ばれたのは、「中大生協の利用改善に必要なものは何か:学生アンケートによる分析を通じて」というテーマで発表を行った、AI・データサイエンス演習中村ゼミの報告だ(代表者=石田千尋)。実は毎年億単位の赤字が続いているという中大生協。この問題に対し、食堂事業部に焦点を当てた本発表では、「料理の印象」と「女性」がカギを握っていることを学生アンケートから導いていた。これを受け、「見た目と美味しさを両立した料理を提供すること」「女性が最も不満に感じているWi-Fi環境を整備すること」の2点を改善案として提示し、そうすることで中大生協全体の経営改善が見込めるのではないかという内容であった。
「中大生協を救いたい!」との思いを胸に起こされた報告であるそうで、学生アンケートから得られた相関性などについての分析が、丁寧にそして緻密に行われていた。また、質疑応答の際に指摘された内容について、教授のもとに再度質問しに行っていた姿も印象的であった。発表後には大きな拍手に包まれ、最優秀賞にふさわしい盛り上がりを見せた。
どのグループの発表内容も非常にハイレベルであり、大変興味深いものばかりであった。その全てを紹介したいところではあるが、紙面の都合上、ここでは2つのグループのみ紹介しようと思う。
まず紹介させていただくのは、「5つの性を持つインドネシアのブギス族~イスラームと土着文化の狭間で~」というテーマで発表を行った、加藤ゼミの報告だ(代表者=杉村千依)。タイトルにもあるように、インドネシアに住むブギス族にはなんと5つもの性があると言う。いわゆる男性と女性に加え、「チャラバイ」と呼ばれる心が女性の男性、「チャラライ」と呼ばれる心が男性の女性、そして、両方の要素を併せ持つ「ビッス」と呼ばれる存在が共存しているブギス社会。イスラームという厳格な宗教のもとで、彼らはどう折り合いを付けて生活しているのか、また如何にして文化が混ざりあっているのかという内容であった。
最後に紹介させていただくのは、「日本の金融リテラシーを高めるために:実証研究に基づく政策提言」というテーマで発表を行った、中村ゼミの報告だ(代表者=丸野雄一)。現在の日本では少子化の影響により、年金制度で高齢者の「健康で文化的な最低限度の生活」を保障することが事実上不可能となっており、政府は自発的に資産形成を促すために、金融教育の提供など多くの施策を行っている。金融教育を受けているかどうかで将来の資産形成に莫大な差が生まれるため、金融教育を受けることには大きな意義がある。しかし、これらの金融教育は供給が足りておらず、日本ではまだ普及していない。この問題を解決するために、どのような部分で金融教育が不足しているのか、どのような金融教育が適切であるのか、また何が原因で金融教育やその効果を阻害しているのかを、性別や年齢、職業などの属性に留意しながら分析し、その結果に基づいた政策提言を行うという内容であった。
このように、本選・予選ともに有意義な発表で盛り上がりを見せたリサーチフェスタ2023。「知の祭典」の名に恥じない研究成果の数々は、一見の価値があるだろう。来年度は是非その目でその耳で、彼らの勇姿を確かめてみてはいかがだろうか。(板谷・原)
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